水槽の「富士山」を擦ってみたら。二年間気づかなかった、我が家の小さな縄文ブレイク

淡水アクアリウム

君…今まで気が付かなかったけど、お宝かい!?

拾って水槽に入れてた石が、絵の具になった話。

​数年前、とある河原で一目惚れした石があります。

​その河原は、驚くほど美しい水色やピンクや緑、黒などの大量の石で埋め尽くされていました。

河原の石全体、そのカラフルさが通常運転なのです。

別に秘境ではありませんwww

家族連れや学生グループが普通に遊びに来る、比較的安全で遊びやすい川辺です。

星の数ほどあるものの1つで、特別珍しいものではなさそうでしたが、私が見つけたその石は、水色が特に鮮やかに見え、一部がくっきりと真っ白

その姿がまるで「雪を頂いた富士山」のようで、愛おしくなって家へ1つ連れて帰ったのです。

すみっコぐらしの「やま」にそっくり!

【やまいし】と名付けました。

​それから約二年間。その石は我が家の水槽の中で、メダカやナマズたちの穏やかな日常の背景(兼、お気に入りのレイアウト)になっていました。

ときどきコケが生えれば、歯ブラシでゴシゴシと擦り、時にはヌマエビたちにツマツマとお掃除をしてもらう。

そんな、ごく普通の「水槽の石」だったはずでした。

↑チラッと写ってるのはチョウザメの尾ビレ

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​頑固なコケと、淡い期待から始まった「実験」

​ところが最近、ヌマエビたちがサボり始めたのか、はたまた他の美味しいエサで十分なのか、やまいしのコケが綺麗にならなくなってしまったのです。

歯ブラシで磨いても落ちない、ちょっと頑固な緑…。

そこでふと頭をよぎったのが、子供と一緒にYouTubeで観ていた『週末縄文人』さんの姿でした。

石を石で磨いて(気が遠くなるほど長時間)、ピッカピカにしていたのを思い出したのです。

そうだ、石で擦ってみよう…‼️

​もしかしたらピッカピカになるかも。

なんて淡い期待を抱きながら、子供がまた別の川から拾ってきた、いかにも硬そうな黒っぽい石を手に取りました。

遊び半分に、水槽の富士山をキュッ、キュッと擦ってみたのです。

​すると、次の瞬間に起きたのは、想像もしない事態でした。

えっ……絵の具……!?

​軽く擦っただけなのに、みるみるうちに石の表面が削れ、水がとろりと不透明な美しい「ミルキー翡翠色」に染まっていく

それはまるで、水を加えたばかりの日本画の岩絵の具そのものでした。

​二年間、毎日水槽のなかにあって、あんなに魚たちと馴染んでいた石から、こんなに鮮やかな色水が生まれるなんて。

あまりの変貌ぶりに、子供と一緒に声を上げて驚いてしまいました。

やまいしはもちろん、ただの黒っぽい石にも驚き…

ものの数回、石でこすっただけでこれ。

今まで、歯ブラシでこすっても全く変化無し、当然、水が濁ることも皆無でした。

なので、この突然の変貌ぶりに驚愕‼️

​手のひらの上で溶け出す、魔法の石の正体

やまいしよ…

君は一体、何者なんだ?

気になって調べてみると、どうやらこの石、宝石のような商業的価値は高くないものの、

地球のロマンが詰まった「粘土岩(ねんどがん)」や「泥岩(でいがん)」の仲間である可能性が高いようです。

初めて聞いた。

1. 縄文人も愛した「天然の岩絵の具」

​天然の鉱物の中には、驚くほど柔らかく、水分を含むと脆くなる性質を持つものがあります。

昔の縄文人や絵師たちが、山や川から色のついた石を拾ってきては、すり潰して壁画や装飾の「絵の具」にしていた、まさにあの現象が、我が家の洗面所で再現されたわけです。

たまたま子供が拾ってきた黒い石が、天然の「すりこぎ」として完璧な硬さだったのも、この奇跡に拍車をかけました。

​2. カラフルな色の秘密

​この仲間は、含まれる成分(鉄の酸化状態など)によって、水色(青緑)、ピンク、黒、グレーなど、驚くほどカラフルなバリエーションが存在するそうです。

そういえば、あの河原にもはっきりと違いのある4〜5色の石が転がっていました。

あれは人工物なんかではなく、すべて自然が作った色彩のパレットだったのです。

この石は「圧縮粘土」…これって、本当に『石』なの?

ここでひとつの疑問が浮かびます。

水に濡らして擦っただけでドロドロの絵の具に戻るなら、

それってただの固まった粘土(泥)であって、まだ『石』とは呼べないんじゃないの?

​実はこの感覚、地質学的にも大正解だそうです。​

結論から言うと、この粘土岩という存在は、「泥」から「カチカチの石」へと生まれ変わる、まさに『中間』のグラデーションのなかにいる状態。

いわば、地球の圧力によって限界までギュッと固められた、大自然の「生チョコレート」のようなものです。

それにしても、2年間も雑に扱って、落っことした事もあったのに、こんなにすぐ削れる石だったなんて…。

カチカチだったんだよ〜〜😭!?

​さて、自然界で泥が完全な「石」になるまでには、長い時間をかけた3つのステップがあります

そもそも「粘土(今までの話でいう泥)」ができること自体、様々な条件と途方もなく長い年月が必要。

地球のどこにでも粘土があると思ったら大間違いなんだって。

1、ただの泥(バラバラの状態)

川底などに積もったばかりのドロドロ・サラサラの土。

2、粘土岩(今回の石・中間の状態)

上にどんどん新しい土砂が積み重なり、その凄まじい重み(圧力)だけで中の水分が絞り出され、形を保てる硬さに固まったもの。

​3、完全な岩石(結晶化した状態)

さらに地下深くの熱で何百度にも熱せられ、成分が完全に「結晶」として噛み合ってカチカチになったもの。

我が家の水槽にいた富士山石は、このステップ2の段階で時を止めていました。

​熱で完全に焼き固められているわけではないので、形はしっかり石の硬さを保っているけれど、水と強い摩擦が加わると、すぐにとろけて元の泥の表情を見せる……。

​あのみるみる溶け出したミルキー翡翠色のドロドロは、何万年、何百万年もの間、石のなかにギュッと閉じ込められていた「太古の泥の記憶」が、摩擦によって目を覚ました瞬間だったのです。

何歳なんだチミは。

​そう思うと、「これって石なの?」という境界線の曖昧さこそが、この石が持つ最大のロマンなのかもしれません。

​富士山の「雪」に隠された、数百万年のドラマ

​さらに面白いのが、あの「富士山の雪」のような、くっきりと分かれた白い部分の秘密です。

一見、人工的に塗られたようにも見えるあの白は、何万年、あるいは何百万年もの昔、地球の環境がガラリと変わった証拠なのだそうです。

地層のサンドイッチ

緑色(青色)の火山灰がじっくり降り積もっていた海底に、ある時たまたま、成分のまったく違う真っ白な火山灰の地層が挟まった。

​地下水の通り道

地下深くで温泉のような熱水がひび割れを通り抜け、そこだけを脱色したり、白い鉱物に変えたりした。

別のものが重なったか、あるいは一部が化学変化を起こした!

それも何万年もかけて…

そんな途方もないスケールのドラマを経て、川に流され、丸くなり、巡り巡って我が家の水槽にやってきたのだと思うと、ただの「拾ってきた石」を見る目が変わってしまいます。

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​💡 未来の姿は、ひょっとすると「すずり」や「高級な壁材」?

どうやらまだ完全なる石になりきっていないらしい「やまいし」。

もし、現在のようにバラバラになって河原に転がらずに、地層に埋まり表面に出ることないままの状態で100万年経っていたら…?

この先、あの河原の上に色々堆積して地中に埋まり、そのまま100万年経ったら…?

もしかして、結晶化して「透明ブルーやまいし」になるの!?

​結論から言うと、

透明感が出るというよりは、金属的なツヤや、シルク(絹糸)のような独特の上品な輝きを持つ、カチカチの石に大変身するそうです。

​1. 触感の変身:泥の柔らかさから、シルクの輝きへ

​結晶化が進むと、もともとバラバラだった目に見えないほどの微細な粘土の粒が、熱と圧力によって「雲母(うんも)」というキラキラした薄い板状の鉱物へと生まれ変わります。​

⭐️見た目の変化

顕微鏡でしか見えなかった粒が、綺麗に整列した「結晶」になります。

そのため、光が当たるとシルク(絹糸)や真珠のような、上品でなめらかな輝きを放つようになります。

​⭐️名前の変化

この段階になると、名前も粘土岩から「千枚岩(せんまいがん)」や「結晶片岩(けっしょうへんがん)」という、立派な「変成岩(へんせいがん)」の仲間へと昇格します。

2. 構造の変身:パイ生地のように「薄く剥がれる石」へ

​結晶化した雲母という鉱物は、すべて同じ方向(圧力を受けた方向に対して垂直)に綺麗に並ぶ性質があります。

そのため、完全に結晶化すると、まるで何層にも重なったパイ生地やパイの実のように、薄くペリペリと剥がれる性質(片理:へんり)を持つようになります。

水に濡らして擦ってもビクともしないほど硬いのに、横からの衝撃には弱く、パカリと綺麗に割れる、そんな不思議な石に変わるのです。

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​3. なぜ「透明」にはならないの?

​「結晶化するなら、水晶や宝石のように透明になるのかな?」と期待してしまいますよね。

実は、透明になるには「混じり気のない純粋な成分(例えばガラスの成分であるケイ酸だけ、など)」が、ゆっくり時間をかけて大きな1つの結晶になる必要があります。

​今回の水色の石は、大昔の火山灰や泥、そして鉄や銅などの様々なカラフルな成分がギュッと混ざり合ってできています。

そのため、結晶化しても透明にはならず、むしろ「不透明だけど、結晶の粒が光を反射して、内側から奥深く輝くような、より深みのあるミルキー色」へと育っていきそうです。

こうして粘土が完全に結晶化した石の仲間は、現代でも大活躍しています!

例えば、書道で使う「すずり(硯)」や、東京駅の屋根にも使われている「スレート(粘板岩)」、あるいは日本庭園の美しい緑色の庭石(三波石など)が、まさにこの粘土岩の「未来の姿」です。

​もし、やまいしが川に流されず、そのまま地下深くで何千万年も眠り続けていたら、いつか真珠のような上品なツヤを持つ、誰にも削れない頑固で美しい「青い結晶の盾」になっていたかもしれません!

​そう思うと、結晶化の手前、一番柔らかくて、一番綺麗な絵の具が出る「まさに今」のタイミングで河原で出会えたことは、本当に奇跡的な巡り合わせです…。

​宝石よりも愛おしい、我が家のプライスレスな宝物

​ピカピカの天然石にはならなかったけれど、

二年間を共にした(放置したw)お気に入りの石が、実は「手のひらの上で溶け出す魔法の石」だったという発見は、私にとってどんな宝石よりも価値のある宝物になりました。

こうなってくると、たくさんあったピンクの石も削りたい欲が。

この石ですが…、ひとまず、もう少しだけ絵具採取をした後w、再び水槽の底で小エビたちの隠れ家に戻そうかと思っています。

富士山型の美しいシルエットを崩してしまうのは勿体ない。

​次にコケが生えたら……うーん、やっぱり削れて形が変わっちゃうのは勿体ないから、今度は歯ブラシで優しく優しく、労わるように磨いてあげようと思います。

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